一般社団法人 日本風力エネルギー学会

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これからの風力エネルギーのために


前田 太佳夫(三重大学)

日本風力エネルギー学会の2020-2021年度会長を拝命致しました.会員の皆様ともに風力分野の発展に努めて参りますので何卒よろしくお願い致します.

牛山先生が任意団体として立ち上げられた日本風力エネルギー協会の頃は,初代会長の佐貫先生をはじめ歴代会長が,アマチュアから技術者までを包み込むようなアットホームな雰囲気で風力エネルギーの普及,促進に努められました.その基盤を受け継ぎつつ,勝呂元会長は,他の学協会に劣らない学術組織にするため,日本風力エネルギー学会に法人化されました.その後,石原前会長は強力なリーダーシップにより組織を整備され,安定して運営できる学会に育てられました.私のミッションとしては,学会の基盤を盤石にするとともに,風力エネルギーの発展のために本会ができることを考えていくことにあります.そのスタートラインとして,今期は委員会の構成メンバーも大きく変わり,これまでとは異なった切り口での活動が開始されています.

一方,新型コロナウイルス感染症により,本会も様々な対応が必要となりました.本会最大のイベントである風力エネルギー利用シンポジウムもオンラインで開催することになりました.このほかにも感染症対策により従来とは異なる対応が余儀なくされ,様々なトラブルも予想されますが,オンライン化による学会業務の効率化などは好機ととらえて進めて参りたいと思います.

以下には今後本会が力を入れていく活動や,本会が風力エネルギーの発展に貢献するには何をしたらよいのかを綴ってみました.ご一読いただき,会員の皆様からも意見をいただいて,ともに考えていきたいと思っています.


主力電源化の重責

再生可能エネルギーが主力電源として位置づけられ,そのなかでも,風力発電は最もコスト競争力のある電源として期待されています.これは,風力発電は,これからは分散型電源としてではなく,経済性と信頼性を確保した主力電源という重責を負ったことも意味しています.

新型コロナウイルス感染症の拡大により世界的に経済が停滞しているのとは対照的に,風力発電については導入計画が活況です.感染症の影響により,各種製品に対する輸出入への影響がクローズアップされていますが,感染症対策が長期に及ぶとエネルギーについても海外依存度の高い日本は影響が表れることを危惧しています.これに対して,原料の輸入に頼らない風力発電はエネルギー安全保障の面でも今後益々重要になることを再認識させられています.


人財育成

エネルギー安全保障や地球温暖化防止を考えると,必然的に国内の風力発電は増えていくことが予想され,すでに大量導入時代の入口に立っています.ここで準備しておかなくてはならないのが,国内の風力産業のサプライチェーンであり,また,風力産業を支える人財です.

国産の大型風車メーカがなくなったため,風力産業の衰退や,風力技術を支える技術者の流出が懸念されています.今後,主力電源を海外製風車に頼ることになるため,維持管理と保安に対して,技術開発経験を有する人財がいなくなくなることは,日本にとって大きな不安材料となります.

一方,国内の陸上風力発電の導入計画は増加し続けており維持管理と保安についての重要性が増しているとともに,洋上風力発電についても再エネ海域利用法に基づく促進地域が拡大されつつあり,洋上風力発電の導入促進にともなう新たな産業の創出が期待されています.そのため,新しい産業技術や,維持管理と保安に対応できる人財の教育は本会が担うべき重要な役割です.

欧州では2012年からEuropean Wind Energy Masterプログラムにより複数大学が横断的に風力エネルギーの専門教育を行っています.日本でも風車のメンテナンス・エンジニアの養成プログラムコースを創設した国内高等教育機関もあります.本会会員が教員を務める大学・高専などからは卒業生を風力業界へ送り出していますが,風力の専門知識を有した人財は不足しており,今後の導入拡大を考えると益々人財育成が重要です.

本会では2014年度からWind Energy Handbook(第2版)の和訳に取り組んでいます.この本は風力発電の基礎から応用まで書かれており,世界中で読まれている「風車の教科書」といえるものです.2020年度中には和訳を終える計画であり,完成次第ご案内致しますので,手に取ってご覧下さい.教員であれば授業で教科書として使っていただくのも良いと思います.また,和訳本をもとにして技術講習会を開催する予定です.産業界の皆様は技術講習会に参加していただき知識を深めていただきたいと思います.


女性の活躍

海外では女性がリーダーを務める大型プロジェクトが多くあり,国際会議でも多くの女性が発表されています.

日本の風力分野でも様々な場で女性が活躍されていますが,一部の方々に限られています.広範な分野で構成されている風力を盛り上げていくためには,様々な,そしてより多くの方々の意見や,幅広い視点が必要となっていくことでしょう.そこで本会では今期から全ての委員会活動に対して女性に参画していただけることになりました.これを機会として,女性が本会で活躍し易い環境を整え,風力エネルギー分野で活躍される女性が益々増え,風力が盛り上がっていくことを楽しみにしています.


研究会の活性化

本会の特徴は,幅広い分野の会員が加入していることです.大型風車や小形風車の研究者や技術者が多く在籍していることはもちろんですが,輸送,メンテナンス,社会受容性,保険,コンサルティング,教育など,風力エネルギー全般をカバーできる国内唯一の学会であることが強みです.

本会では重要なテーマや会員が興味あるテーマを取り上げて研究会を立ち上げています.現在は「ブレード技術研究会」と「空中風力発電研究会」が活動しています.これら研究会の場に若手を含めて多くの方々が参加し,持続的に風力を盛り上げるように活性化していきたいと考えています.


会員増強

風力発電は,陸上から着床式洋上へ,そして浮体式洋上へと,他の分野や新しい技術を取り込んで進歩してきました.風力分野の拡大にともなって,新しく風力に携わることになった皆様には本会の会員になっていただきたいと思っています.これまでも展示会でブースを出展し本会の魅力を知っていただく活動を進めてきましたが,会員数はほぼ横ばいです.会員の層が厚くなると本会の活動にも好循環が期待されます.そのため新企画の立案や活動のために会員増強を始めた委員会もあります.委員会や研究会の活動を通じて会員拡大に向けたキャンペーンを繰り広げていきたいと考えていますので,皆様も会員拡大にご協力ください.


将来へ向けての普及啓発活動

国が舵を切って再生可能エネルギーの導入拡大を推進することは枠組みとしては必要なことです.一方,実際に風車が建設できるか否かは地元の理解なくしてはあり得ません.そのためには風力発電を正しく理解できる人を増やすことが必要となり,子どもの頃から風力発電に親しんでもらう活動が有意義です.本会では,長期的視点に立って小中学生対象の工作教室や体験学習として,青少年のための科学の祭典や日本風力発電協会に協力してGlobal Wind Day活動を行うなど,裾野の広い活動を行っています.これらの学習プログラムを通じて,子ども達がエネルギーや環境に対して敏感な人に育ち,将来の日本のエネルギーを支えてくれることを期待しています.世の中で物事が十分に認知されるには一世代20年を要すると思っており,Global Wind Day活動は10年が過ぎましたので,あと10年を頑張れば日本中の人が風車を好きになってくれると信じています.


社会貢献

本会会員の多くは有識者として,国や自治体が開催する風力関係の会議や審査に協力されています.とくに地方には風力関係者が少ないため,自治体の環境審議会などに参加される会員の方々は多くいます.これらの審議会に出席して感じるのは,風力発電の良さや必要性がわからないまま風評を信じ込んでいる人が多いということです.本会は風力発電に関する専門家の宝庫ですので,日本風力発電協会をはじめ,関連する他の学協会と連携して,専門家として正しいメッセージを発信し,風力エネルギーのさらなる発展に貢献してまいります.

また,本会は「学会」ではありますが「風車が好き」というアマチュアの皆様が在籍しているのも特徴です.会員同士の結びつきは緩やかですが,「風力エネルギー」というキーワードに対しては非常に強固な結びつきをもった学会です.とくにアマチュアの皆様は地域での風力導入への力強い味方であり,風力エネルギーを通じて日本のエネルギーの将来に大きく貢献される方々です.以前,「最近の学会誌は難しくなった」との声がありましたので,気軽に読める記事として,これまで自治体の紹介を連載してきました.今年からは,団体会員の皆様に「わが社と風力エネルギー」の連載を書いていただいています.地元に立っている風車の事業者や風力企業のことは意外と知られていないものです.この記事を読んで風力の現状について知っていただけると幸いです.


国際貢献

厳しい自然環境を克服し,風力発電の信頼性を確保するために,本会会員が中心となって様々な対策に取り組んできました.これらはサイクロンや落雷,乱流で悩む各国でも有用であり,日本提案の設計基準が世界標準の風車規格に採用されています.日本では国産大型風車メーカがなくなりましたが,風力発電の安全や信頼性を考えると,国内で技術的な知見を有し,国際規格で製造される輸入風車に対して国内事情を反映することは重要です.これからも日本電機工業会等と連携して国際発信に協力していきます.


日本もやっと風力発電に対してかなり前向きな国になってきました.これからの大きな変化に対して本会がどのように対応していったら良いか,会員の皆様とともに考え,風力発電の導入拡大に貢献するとともに,風力エネルギー分野の一層の発展を目指したいと思います.

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